明日世界が終わるとしても・・・・・・

毒とエログロナンセンスと妄想と  きっと何の役にも立ちません

母を見送る

母が他界した

 

長い介護状態で、ほとんど他人にまかせっきりだったけれど、危篤だと連絡があった夜に駆けつけて、朝方息をひきとるまでそばにいた

父の最期の時は間に合わなくて、子供時代も母がまだ元気だった頃も、仲がいいともわかりあえていたとも思えないまま意識的に無意識を装い静かに距離を置いて過ごした自分が、母を看取る事になったのは何かを託されたのか偶然の成り行きか・・・

 

葬儀会場に運ばれて、綺麗に整えられたその姿は、病床の苦しそうな顔とは別人のように威厳を保って見えた

眠っているような、穏やかな顔、と表現される事が多い気がする死顔だけれど、

逆に苦悶のと言う表現はあてはまらないものの、死して尚何かを教え諭すかのような強さがあった

病気になるまでは

自分にも他人にも厳しい人だった

若々しくて綺麗だと言われていた

機嫌のいい日のでたらめな鼻唄を最後に聞いたのはいつだったか

今頃、先に逝った父と、可愛がっていた愛犬に会ってホッとしているだろうか

母との思い出話はうまく書けそうもないし、これ以上記すつもりもなくただ自分の心の中にぼんやりとあって、これからもふとした時に一人で思いだし、焦点を当てたりするのかも知れない

 

葬儀を終えて、どうにもわだかまっているのは生前の母と自分のあれこれではなく通夜と葬儀を頼んだホールの担当者の言動で、

最初の通夜告別式の打ち合わせの時から、馴れ馴れしさが鼻につくような別の場所で知り合っても仲良くできる気のしない、冠婚はいいとしても、葬の作業には不向きな場違いな明るさ、って言うのか遺族への気遣いがどうもしっくりこない中年男

生前の見積もり打ち合わせみたいな段階であれば競合他社との内容の違いや、オプション、サービス面を比較される立場で向こうは下から出てたかもしれない、そう言うところは何だって一緒だと思う、車を買う時とか、引っ越しをどこに頼むかとか。

だけど、すでに亡くなった人をどこかでちゃんと見送るためにはその場所の選択に何社も比較している時間がないし、こちらの余裕もない、とりあえず母が会員になっていた会館で、と言う結果一択でそこになったと言う経緯で、否応なし自動的に付いてきた担当者に微妙な違和感を感じても、イラ立っても事が事だけに文句の言いようもない

祭壇の大小、棺や、花飾り、などあらゆるものに、グレードがあり、そのグレードによって価格は大きく差があり、担当者が、故人様のご冥福をより深く祈るために、安価なものではなく、少しでもいいものをみたいな事を言いながら、どう考えても母が聞いたとすれば納得するとは思えない値段の棺を勧めてきたり、精進落としの料理も超高級フランス料理かと思うようなものをグイグイアピールしてきたり、正直悲しんでいるひまもなく、知らせないといけない親戚や、仕事を休むための段取りも、やらなければならない事をこなしながら、母がこの世界からいなくなったと言う現実感のなさでフワフワとして足元の定まらない中、加入していた互助会のコースだと会費が足らなくて、死装束はペラペラなんですよ~、それじゃあちょっと可哀想ですよ~、などと言われたので、それじゃあそれなりのものにと頼んだけど、標準コースに付いてる装束がペラペラでどうも今一つなんだとしたら、その最初のペラペラ設定が間違ってるんじゃないのか??他にもちょいちょい、フレンドリーではすまされないくだけた物言いだったり、ちっともそぐわない能天気な担当者の言いなりになってぼったくりバーでぼったくられるように母を送るのは不本意なので、送る側の私と妹、二人の身の丈にあったものを選択したけれど。

 

そして葬儀の日から二日後、セレモニーの間中、担当者が新人教育のために連れて歩いていた研修生と一緒に葬儀費用の回収にやってきた

 

支払いが済んでさっさと帰っていくと思っていたら、母が入っていた互助会の会員資格が母の葬儀と共に消失したので、今後また新たに私の名前で会員になるように勧められたので、いや今すぐそう言う事務的な事は考える余裕がない、と断ると、

「いやいや、こう言う事はまた改めてと言っているうちに機会を逃してしまうので今すぐの入会をおすすめします、お母様が会員になっておられたのでオプションを追加しましたけど、今回の葬儀は一般の方と比べて大変お得になっていましたから」

と言うような事をグイグイと営業トーク全開で、何ならちょっとドヤ顔で笑いながら、って何で笑えるのか、葬儀代金がどれだけ安かったかなんて、あんまり意味のない事じゃないのか?? 世間ではよく、お父さんのお葬式、お母さんの時と比べて大分安かったよねー、良かったわー、とか言う会話が交わされていたりするのか??・・・・ぼんくらは四の五の言わずにとっとと帰れと言わずにこらえたのは、やはり母に免じてではあるけれど、ゴリ押しにうんざりしていたら「とにかく入っていただけると私の評価につながりますから、是非ご入会下さい」と、え?? 今、自分の評価?? につながる?? って、言った??関係ないし、あんたの評価なんか知らんやんっ!!!!!!!!! と、激昂して広げられた書類の乗ったテーブルをひっくり返すか、殴りかかるかと言うような気配を察したのか、同席していた妹が自分が入会する、と言い出してだからそれでいいとも思えず、振り上げたこぶしはドンとテーブルに。

いい年したおっさんに若手女子営業社員みたいな泣き落としされるなんて思ってもみなかった

母がいたらどうしたか、いなくなったから起こったあれやこれやもいつか母を思い出す時の鍵になるんだろうか