「 死にたければ 人は死んでもいいと思う 」
それを手に取ったのは本当に偶然で、
時々出かける場所の近くの まあまあの広さの古本屋で
今までそんな店がある事も気がつかず その時初めて店に入った
古本で出回るか、文庫になるまでガマンできずに 新刊で買った本の何冊かを目にして
敗北感を感じてしまうのはなぜだろう
気を取り直して単行本コーナーを見ていたら
埋み火 日明 恩 って
うずみび たちもりめぐみ
と フリ仮名があったのでわかったけれど なければ これなに??何て読むんだろ・・ みたいな本が目についた
たちもりめぐみ・・・・・・??名前ぐらいは聞いたことがある と 言いたいのに
その日その時まで知らなかった
初版は2005年、定価1800円 が 税込み300円の値札シールがあったので買って帰った
主人公の22歳の消防士が遭遇したある失火を発端に 次々と起こる老人宅の失火、焼死
それについて疑問を探りながら関わりあう人たちとのエピソードも多彩で細かく、読み応え充分
全12章 読み終わるのが少し残念な気がした
ちゃんとした感想文は大の苦手だから書けないし、書かない
ただ もしかしたら私以外のお利口な人たちは、
それ について当然のように考えているのかどうかはわからないけれど、
自分は、普段は自分の事で精一杯で直視することも考える事も避けているような事 について
主人公が語る言葉が、物語の面白さや興味とはまた別に印象的な部分があったので 書き記しておこうと思った
「・・・・・・・・・・そもそもどんなことがあろうと、人は生きていなければならないなんて俺は思っていない。
人にはそれぞれ事情がある。死ぬ事でしか楽になれない人だっている。
確かに死ねば終わりだし、本人はそれで良いだろう。
だが死んで楽になるのは本人だけだ。逆に残された人は、死んだ人の何倍も苦しむ。
それこそずっと、生きている間中、後悔を背負い、自分に何か落ち度があったに違いないと自省しながら生きつづけていかなければならない。
だから自分の周りの人たちにそれだけの辛い思いをさせて良いと思うなら、若しくは周囲もそれでいいとあらかじめ了承して貰っているのなら、
べつに人は自ら死んだっていい。俺はそう思っている。
ただし、俺たち消防士----------ことに俺---------に厄介を掛けず、間違っても危険な目に遭わせなければ 」
俺たち消防士、以降の言葉の意味は小説の中に
別の章にも
「 死にたければ人は死んでもいいと思う
それしか方法がないのなら仕方がない。
けど周囲に、自分に関わっている人全員に、ちゃんと説明して了解を得てからにするべきだと俺は思う。
じゃないと、残された者はずっと後悔して苦しむんだぜ、どうして気づかなかったんだろう、
なぜ、止められなかったんだろう、って 」
主人公を真似て語るなら
生きる権利 も 死ぬ権利 も 権利 という面では人間はどちらも持っている
・・・・・おそらく
他人がそれを行使させるとかさせないとか言う問題でもないだろう
自ら死を選ぶことさえできない状態で 人の手を借りて生き続けるしかない自分の母を見ていて
死を選ぶのか踏みとどまるのか、選択肢があるだけ贅沢な気もする
そうやって比較する事がいいか悪いかわからないポンコツが語るべき話じゃないかも知れない
だけど、少なくとも生きるか死ぬか判断する能力があって生きているならば
人と関わって生きていること 人と関わらずには生きられないことの受容も責任も、
人に重荷を背負わせて、後に人の手を煩わせることも省みず( もはやその状況であれこれを省みることができないからこその決断なのだとしても )
自らこの世からいなくなる事を選択する身勝手さも
何もかも置き去りにはできないししたくない
・・・
ずっとそう思ってきたし、たぶんこれから先も自分はそう思うと思う
だけど、そんな思考さえ 自己満足でエゴイズムかも知れない
本当に追い詰められれば、逃げ場所がなくなれば、自分がいなくなる事を選んだ事を
残る人に許してもらいたいと思うかも知れない